計算根拠と検証記録 = 専門性の証明
このページは本計算機の計算根拠と検証記録です。公差スタック計算機の全計算式を、商用ソフトが共通して用いる公式・ NIST/SEMATECH e-Handbook・JIS規格の既知例題と数値突合し、誤差%を公開しています。 運営者(現役の機械設計エンジニア・実名非公開)の専門性は名乗りではなく、この検証の再現性で担保します。
下記の入力条件・乱数シード・試行数を用いれば、第三者が独立に同じ結果を再現できます。 「当機の出力」欄は、本ページ表示時に計算エンジン(lib/の純関数)が 実際に算出した値をそのまま掲載しています。
例題1:5要素の直線スタック(ワーストケース+RSS)
ハウジング内寸 50.00 から 3 部品(20.00 / 15.00 / 10.00)を差し引いた隙間。 各寸法に工程σ = 公差 ÷ 3 を明示入力(= ±3σ が公差幅に一致する教科書的 RSS スタックの前提に揃えるため)。
| 寸法 | 公称 | 公差 | 方向 | 工程σ(=公差/3) |
|---|---|---|---|---|
| ハウジング内寸 | 50.00 | ±0.10 | + | 0.03333 |
| 部品A | 20.00 | ±0.05 | − | 0.01667 |
| 部品B | 15.00 | ±0.05 | − | 0.01667 |
| 部品C | 10.00 | ±0.05 | − | 0.01667 |
| 項目 | 入力条件 | 期待値(出典) | 当機の出力 | 誤差% |
|---|---|---|---|---|
| 公称隙間 | Σ(方向×公称) = 50−20−15−10 | 5.000 | 5.000 | 0.0000% |
| ワーストケース ばらつき半幅 | 全公差同時最悪 | ±0.2500(=Σ公差) | ±0.2500 | 0.0000% |
| RSS ±3σ | √(Σσ²)×3 | ±0.132288(=√0.0175) | ±0.132288 | 0.0000% |
出典(公式):ワーストケース(=各寸法公差の算術和)と RSS(=二乗和平方根)は 商用公差解析の標準公式。Drake, P. J. Jr.(編)Dimensioning and Tolerancing Handbook, McGraw-Hill, 1999, 第9章 「Traditional Approaches to Analyzing Mechanical Tolerance Stacks」/ Fischer, B. R. Mechanical Tolerance Stackup and Analysis, 2nd ed., CRC Press, 2011。 期待値は当該公式へ本例題の数値を代入した決定論的な結果です (√0.0175 = 0.13228757)。
この隙間に規格 USL=5.25 / LSL=4.75(中心一致)を与えると、当機は Cp=1.8898、Cpk=1.8898、余裕=5.669σ、判定=合格 を返します(中心一致のため Cp=Cpk)。
例題2:工程能力指数 Cp / Cpk(NIST の教科書例)
NIST/SEMATECH e-Handbook §6.1.6 の数値例をそのまま使用:USL=20、LSL=8、 平均 x̄=16、標準偏差 s=2。 当機の Cpk 計算関数(lib/capability.ts)へ直接入力した結果を掲載。
| 項目 | 入力条件 | 期待値(出典) | 当機の出力 | 誤差% |
|---|---|---|---|---|
| Cp | (USL−LSL)/(6σ) = (20−8)/(6×2) = 12/12 | 1.000(NIST §6.1.6) | 1.0000 | 0.0000% |
| Cpk | min[(20−16)/(3×2),(16−8)/(3×2)] = min[0.667,1.333] | 0.667(NIST §6.1.6) | 0.6667 | 0.0000% |
| 合否(閾値1.33) | Cpk 0.667 < 1.33 | 不合格 | 不合格 | 一致 |
出典:NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methods, §6.1.6 「What is Process Capability?」。
URL: https://www.itl.nist.gov/div898/handbook/pmc/section1/pmc16.htm
定義:Cp=(USL−LSL)/(6σ)、Cpk=min[(USL−μ)/(3σ),(μ−LSL)/(3σ)]。 JIS でも JIS Z 8101-2(統計—用語及び記号—第2部:統計の応用)で同一の工程能力指数が 定義されています。
例題3:モンテカルロの再現条件
例題1と同じスタックに対し、乱数シード 12345・試行数 100,000 でモンテカルロを実行。乱数は seed のみで 決まる決定論的生成(mulberry32+Box-Muller。Math.random不使用)なので、同一 seed・同一試行数なら結果は完全再現します。理論上、平均は 公称隙間に、標準偏差は RSS 合成σに収束します(相互検証)。
| 項目 | 入力条件 | 期待値(出典) | 当機の出力 | 誤差% |
|---|---|---|---|---|
| サンプル平均 | seed=12345, N=100,000 | 5.0000(解析=公称隙間) | 5.00011 | 0.0023% |
| サンプル標準偏差 | seed=12345, N=100,000 | 0.04410(解析=RSS合成σ) | 0.04426 | 0.3624% |
再現手順:lib/montecarlo.ts の monteCarlo() に 例題1の寸法・{ seed: 12345, trials: 100000 } を渡すと上記が得られます(単体テスト lib/montecarlo.test.tsで決定論・収束を検証済み)。モンテカルロは統計的手法のため解析解との 誤差は試行数に依存しますが、本条件では平均・σともに 1% 未満で一致します。
例題4:公差配分の逆算(Sprint 2・独自例題・手計算突合)
RSS 合成σが目標Cpkに届かないとき、各寸法の公差をどれだけ締めれば (または緩めれば)届くかを、比例スケーリングと均等σ配分の 2手法で逆算します。出典が公開されている商用ソフトの同一例題が見つからないため、独自例題・手計算突合として、全入力・中間量・両手法の推奨公差を数値で示し、 当機の出力と誤差%を併記します(有効数字7桁)。
| 寸法 | 公称 | 上公差 | 下公差 | 方向 | 工程σ(有無) |
|---|---|---|---|---|---|
| D1(大・可変) | 40.00 | +0.20 | −0.20 | + | 未入力(自動換算) |
| D2(中・可変) | 30.00 | +0.04 | −0.04 | + | 未入力(自動換算) |
| D3(小・可変) | 10.00 | +0.03 | −0.03 | + | 未入力(自動換算) |
| D4(固定) | 20.00 | +0.10 | −0.10 | + | σ=0.010(固定) |
規格 USL=100.12 / LSL=99.88、目標Cpk=1.33。 μ=Σ(公称)=100.00、specHalf=min(USL−μ, μ−LSL)=0.120。σ↔公差 換算係数 CONV=1.5+3×1.33=5.49(Cpk換算は 1.33 固定)。 現状 Cpk=1.029(< 1.33 のため締めが必要)。
(1) 中間量(目標σ・固定分の差し引き・両手法の係数)
| 項目 | 入力条件 | 期待値(出典) | 当機の出力 | 誤差% |
|---|---|---|---|---|
| 目標σ | specHalf/(3×Cpk目標) = 0.12/(3×1.33) | 0.0300752 | 0.0300752 | 0.0000% |
| 固定分σ(D4) | 工程σ手入力=配分対象外 | 0.0100000 | 0.0100000 | 0.0000% |
| 可変分の目標σ | √(σ_target² − σ_fixed²) = √(0.03007519²−0.010²) | 0.0283640 | 0.0283640 | 0.0000% |
| 可変分の現σ | √(Σ可変現σ²)、可変現σ = 公差/5.49 | 0.0375511 | 0.0375511 | 0.0000% |
| 比例係数 k | σ_var_target / σ_var_current | 0.7553452 | 0.7553452 | 0.0000% |
| 均等σ配分の σ_i,new | √(σ_var_target²/n_var) = √(0.02836401²/3) | 0.0163760 | 0.0163760 | 0.0000% |
| 均等σ配分の推奨公差 | σ_i,new × 5.49 | 0.0899041 | 0.0899041 | 0.0000% |
(2) 手法a 比例スケーリング — 推奨公差 tol_new = k × tol_old(全可変一律)
| 項目 | 入力条件 | 期待値(出典) | 当機の出力 | 誤差% |
|---|---|---|---|---|
| D1(大)推奨公差 | 0.20 × 0.7553452 | ±0.1510690 | ±0.1510690 | 0.0000% |
| D2(中)推奨公差 | 0.04 × 0.7553452 | ±0.0302138 | ±0.0302138 | 0.0000% |
| D3(小)推奨公差 | 0.03 × 0.7553452 | ±0.0226604 | ±0.0226604 | 0.0000% |
| 達成後 合成σ | √(固定σ² + Σ(k×可変σ)²) = σ_target | 0.0300752 | 0.0300752 | 0.0000% |
| 達成後 Cpk | specHalf/(3×達成σ) | 1.330000 | 1.330000 | 0.0000% |
(3) 手法b 均等σ配分 — 推奨公差は全可変で ±0.08990。公差の小さい D2・D3 は Δtol<0(緩めてよい寸法)
| 寸法 | 現公差 | 推奨公差(=均等σ) | Δtol=現−新 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| D1(大・可変) | ±0.200 | ±0.08990 | +0.11010 | 締め |
| D2(中・可変) | ±0.040 | ±0.08990 | −0.04990 | 緩めてよい(緩和可) |
| D3(小・可変) | ±0.030 | ±0.08990 | −0.05990 | 緩めてよい(緩和可) |
| D4(固定) | ±0.100 | ±0.10000 | 0.00000 | 固定(対象外) |
均等σ配分の達成後 合成σ=0.0300752(期待0.0300752・誤差 0.0000%)、達成後 Cpk=1.330000。締め代合計 Σmax(0,Δtol)=±0.110(締め方向のみ)、緩め余地合計 Σmax(0,−Δtol)=±0.110。 D2・D3 は現公差が均等σ公差 ±0.090 より小さいため絞りすぎ=緩めてよいと判定されます。
均一コスト下でのコスト比較(正味の公差削減量):均等σ配分は「目標σを満たす配分のうち 可変寸法の総公差 Σ公差 を最大化する」解(相加・二乗平均の不等式より、Σσ_i² 一定なら Σσ_i は全σ均等のとき最大)なので、正味の公差削減量が最小になります。 可変3寸法の Σ推奨公差は 均等σ= 0.2697 (現状 Σ現公差 0.270 をほぼ維持・正味削減 0.0003)に対し、比例スケーリング= 0.2039(正味削減 0.0661)。 =均一コスト仮定では均等σ配分の総コストが小さい。 一方片側の「締め代合計」だけを見ると大きな D1 を一気に締める均等σ(0.110)が比例(0.066)より大きく見えますが、 その分は D2・D3 の緩めで相殺されます。
再現手順:lib/allocation.ts の allocateTolerances(dims, { usl: 100.12, lsl: 99.88 }, 1.33) に上表の寸法を渡すと本結果が得られます(単体テスト lib/allocation.test.ts で対称・非対称・固定あり・実行不能・ 過剰緩和・片側規格の7観点を相対誤差 1e-9 で検証済み)。使用した σ換算 Cpk は 1.33 固定です。
補足:工程σ未入力時の σ 換算式
工程σが未入力の寸法は、公差から次式で σ を推定します(UI 上にも明示):
導出:対称公差 ±T の規格に対し、工程平均が 1.5σ ずれるという 6σ の慣行を置くと Cpk = (T − 1.5σ)/(3σ) となり、これを解くと T = σ(1.5 + 3·Cpk)、すなわち σ = T/(1.5 + 3·Cpk)。「公差幅」は片側公差量 T を指し、非対称公差では 安全側(σ を過小評価しない)に max(|上公差|, |下公差|) を採用します。 1.5σ シフトは Motorola が 6σ 品質モデルを提唱した際に導入した業界慣行値です。 この推定はあくまで σ 未実測時の目安であり、可能な限り実測の工程σを入力してください。
出典一覧
- NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methods, §6.1.6 What is Process Capability?(Cp/Cpk 定義・数値例)https://www.itl.nist.gov/div898/handbook/pmc/section1/pmc16.htm
- Drake, P. J. Jr.(編)Dimensioning and Tolerancing Handbook, McGraw-Hill, 1999, 第9章(ワーストケース/RSS 公差スタックの標準公式)
- Fischer, B. R. Mechanical Tolerance Stackup and Analysis, 2nd ed., CRC Press, 2011(同上・統計的公差解析の標準教科書)
- JIS Z 8101-2 統計—用語及び記号—第2部:統計の応用(工程能力指数 Cp・Cpk の定義)
- JIS B 0401 製品の幾何特性仕様(GPS)—長さに関わるサイズ公差(公差・ はめあいの定義)
lib/tolerance.ts / lib/capability.ts / lib/montecarlo.ts の純関数に 分離し、lib/*.test.ts で既知入力→期待値を検証しています。